酵素とは?
酵素サプリメントや酵素洗剤、酵素ファステイング…感度の高い人は、すでに酵素に着目しているだろう。
実は、酵素は、私たちの体に潜在的にあるたんぱく質に包まれた生命力のある物質であり、全身に無数に存在する。酵素の神様といわれたエドワード・ハウエル博士は次のように述べている。
「酵素とは、生きることを可能にするための物質であり、生命の光といえる」。
この酵素が働かなければ、いくら体に良いものを食べても、生命維持すら難しい。とても重要なものであることは間違いないのだが、いったいどんな働きをしているのだろうか?
酵素にはどんな種類がある?
「生きるために食べる」ことは、誰にとっても当たり前のこと。しかし、ただ食べるだけでは生きてはいけない。活動するためには、食べたものを消化し、栄養として吸収し、エネルギーに変えていかなければならないのだ。
酵素は、栄養素をしっかりと吸収できるよう、小さな分子に消化させる力となる(消化酵素)。そして、体の中にその分子が吸収したら全身で活動できる物質にならなければならない(代謝酵素)。この2つの作業によって、人間は生きていくことができる。
この生命力を保持する力こそ、消化酵素と代謝酵素の力なのだ。地球上の生物で、体内に酵素が存在しないものはない。
基質特異性
酵素は一つの基質に対し、一つの酵素だけが作用する。例えば、炭水化物という基質にはアミラーゼ、たんぱく質という基質はプロテアーゼ、脂質にはリパーゼといったものだ。そのため、酵素の種類は何万にも達するのだ。
消化と代謝
酵素はその役割から、大きく「消化酵素」と「代謝酵素」の2つのグループに分けることができる。
「消化酵素」は食べたものを消化・分解し、「代謝酵素」は体内に吸収された栄養素を利用できる形にする。そして、その量は無数だ。
代謝とは、ある物質を違うものに変えること。つまり、人間が生きていく上で必要な細胞の入れ換え、再生、エネルギーを作る力、解毒、排泄といった作業を指す。その全てに酵素が存在している。
さらに、私たちの身の回りにも、あらゆるところに酵素が存在する。
「食物酵素」とは、生の魚や肉、野菜や果物に含まれる酵素のこと。また、発酵食品を作る過程でも、それぞれの食材の機能性を高めるために、酵素が役立っている。他には、酵素の分解力・吸収力を利用した洗剤、化粧品もある。
このような体外酵素を摂る意味は極めて大きい。酵素のない加熱食ばかりを食べていると、長生きすることは絶対的に不可能。なぜなら、消化も代謝もできにくくなるからだ。
体内酵素の働き・効果を生かすためには?
人の体内に潜在的にある「消化酵素」と「代謝酵素」。健康を維持するためには、消化を増やし、代謝を活性化することが極めて重要になる。
ところが、加熱食のみの栄養バランスの悪い食事や、アルコールの摂り過ぎで消化酵素が大量に使われると、代謝酵素も働きにくくなり、疲労や睡眠不足、下痢、便秘など、あらゆる症状のトラブルを引き起こしやすくなってしまう。
疲れている時や何らかの症状のある時は、胃腸を休ませ、植物性食物である新鮮な野菜や果物を摂るように心がけたい。
ここで注意したいのは、食物酵素は消化を助けることのみならず、代謝の活性にもつながるということだ。人間の体は、一日一定量しか酵素を産生しない。消化にエネルギーを使うと代謝がおろそかになり、反対に消化にエネルギーを使わない場合は代謝も楽にできる。
酵素のある生の野菜や果物を摂ることがいかに代謝力アップにつながるか、そして、体外からの酵素補給の効果が極めて大きいということを知っておいてもらいたい。
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酵素サプリメントとドリンク
健康や美容に良いイメージがある酵素サプリメントだが、酵素そのものを摂ることを目的にしてしまうと誤解が生じやすい。
市販製品の多くは、野菜や果物を酵素や微生物の力で発酵させ、発酵を繰り返すことでの過程でできる「植物発酵」サプリメントだ。
本物の酵素サプリメントは、何度も発酵を繰り返し取り出した酵素である。そうしてできた酵素サプリメントは、あまり甘くなく、酵素の力も強いものとなる。
消化が良くなり代謝力が増すため、そのような酵素を外から摂る意味は極めて大きい。ただし、酵素を謳う「甘い液体」にはその力がないため、本物を摂り入れるようにしよう。
スムージー&コールドプレスジュース
ジューススタンドなどでもよく見かける、生の果物や野菜を使って作るスムージー。発酵飲料とは異なるが、熱に弱い栄養素や酵素を壊さず、フレッシュな状態で美味しくいただけることでも人気だ。
さらに非加熱にこだわるなら、ミキサーの摩擦熱がなく、強い圧力をかけてジュースを絞りだすコールドプレスジュースもおすすめ。不溶性の食物繊維を分離するので、消化しやすく、疲れた胃腸にも優しいのが嬉しい。
青汁
健康飲料として知られる青汁は、活性型酵素をブレンドするなど、メーカーによって独自の工夫があるのが魅力だ。腸内環境を整えるためには、摂取を習慣化することが大切。
市販の場合、ほとんどのものは酵素力が存在しない。一度加熱殺菌されているからだ。それゆえ、青汁を摂ることによる健康効果は酵素力でなく、食物繊維や抗酸化作用のあるファイトケミカルなどだ。
コンブチャ
モデルやセレブが愛飲していることで人気に火がついた「コンブチャ」。ちなみに、日本でお馴染みの「昆布茶」とは無関係のドリンクだ。
ここで言う「コンブチャ」とは、紅茶や緑茶に白砂糖を加え、菌株を漬け込んだモンゴル発祥の発酵飲料。ストレートで飲むのはもちろん、炭酸やお酒で割るなど、アレンジも様々だ。
美肌やアンチエイジング、デトックスなどの効果が期待されているが、この「コンブチャ」に効果があった場合、それはあくまで菌株の発酵による酵素力によると思われる。
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食品から酵素を摂ることのメリット
食物酵素は肉や魚、野菜、果物に含まれているが、酵素が働くためには適正な温度があり、50℃以上の高温や、急速な乾燥などに晒されると壊れやすい性質がある。
食品から酵素をできるだけ壊さず摂りたいなら、フレッシュで生に近い状態がベスト。だが、食物酵素を摂ったからといって、そのまま代謝酵素に変わるというわけではない。
酵素を含むものを食べれば、その分、体内の消化酵素を余分に使わずにすむ。一日一定量しか生産しない酵素の力(エネルギー)を代謝に使うことができるのだ。もう一つのメリットは、酵素を植物から摂ると(つまり生食をすると)腸の善玉菌が増え免疫力が大きく上がるという点で、これも大きな力となる。
発酵食品と酵素の関係
発酵と酵素は混同されがちだが、厳密には同じものではない。発酵は乳酸菌や酵母菌のような生きた微生物の働きにより生み出されるもの。この酵母菌などの中に存在する物こそが、酵素なの
発酵食品を食べると酵素力が発揮され、腸の中での消化力となり、栄養の吸収を良くする。この意義はとても大きいものだ。発酵のおかげで、うまみ成分も増え、滋味深さが増すことも魅力だ。上手に、日々の食生活に取り入れてみて。
ただし、動物性発酵食品(チーズなど)は、体に害になる場合もあるので気をつけよう。
酵素玄米の作り方、炊き方、食べるメリットは?
酵素玄米は、正しい炊き方をしないとその効果が損なわれてしまう。
玄米を20時間浸水し、その後水を3回入れ換えたら、海藻や茸やゴボウを入れて炊く。炊き上がったら、一日一回かき混ぜ、3~4日保温し続け発酵させて出来上がりだ。
この酵素玄米は、作るのに時間が掛かるところが難点だが、酵素力が出てくるため、極めて多くの効果が出現する。なお、最近では酵素玄米を簡単に作ることができる、専用の炊飯器も発売されている。
玄米の栄養素の他にファイトケミカルも増えるため、酵素の働きで玄米にありがちな消化不良は少なくなるというメリットも強みだ。
スイーツ感覚でフルーツを食べて、美味しく酵素を摂ろう
酵素たっぷりで、ビタミンも豊富なフルーツ。そのままカットして頂くのもいいけれど、栄養を消化吸収しやすくするには、すりおろしたり、低速ジューサーにかけるのがおすすめだ。
また、カットしたフルーツを白砂糖に漬け、1週間発酵させて作る酵素シロップは、免疫力が上がると評判。衛生面が気になる場合は、フルーツと氷砂糖、お酢で作るフルーツビネガーを。砂糖を控えたいというときは、ポリフェノールやミネラルを含む蜂蜜と一緒にいただくのもいい。
細かくカットしたフルーツの蜂蜜漬けをベースに、炭酸やお湯で割るなど、お好みでアレンジも可能。甘酸っぱい香りとともに、気分もリフレッシュしよう。
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酵素ダイエットで気をつけたいこと
カロリーオーバーや不規則な生活…太ってしまう要因は色々あるとしても、代謝がうまくいっていない状態であることは明らか。
代謝の良い体を維持するには、体内酵素を不足させないこと。効率がよくストレスが少ない方法で、体をケアしてみて。
本当の「酵素ファスティング」とは?
ダイエット効果があると聞くとすぐに飛びつきたくなるが、ファスティングはやり方次第で健康になる場合とそうはならない場合とがある。
アメリカでは2021年現在、いわゆる「断食センター」が急増している。そのやり方は、「水のみの断食」、「野菜おろし断食」の2つしかない。これを5~7日することでケトン体が多く出て極めて健康になり、上手に痩せることがきるというもの。
ところが、甘い酵素ジュースで断食をするとまず失敗する。ケトン体が出ず、解糖系を使ってしまうからだ。これでは痩せることができない。
置き換え食
無理なダイエットにはリバウンドがつきもの。良い断食をしても、反動で食べる量が増えては意味がない。断食後は、次のことを1ヵ月続けるとさらに痩せ、健康になる。それは、「少食」、「ヴィーガン食」である。しばらくの間は、動物性食物と甘い物を絶つことが重要になる。
正しい酵素ファスティングの方法
忙しい生活の中でも、気軽に始める人が増えてきた酵素ファスティング。目的は胃腸を休め、体内酵素を活性化させること。いわゆる「絶食」とは異なり、固形物を一切食べないやり方だ
避けておきたいのは、市販の甘い酵素ドリンクを用いること。糖の含有量が多いためとても断食とはいえず、かえって炎症を起こしかねない。
酵素ファスティングにおいてのおすすめは、すりおろし野菜のみを食べるファスティングだ。例えば、大根おろし、キュウリおろしなどのみを数日間食べ続けるやり方だ。
極めて低カロリー、またファイトケミカル、ビタミン、ミネラル、酵素が含まれているため、減量に成功することうけあいだ。
酵素の摂り方とタイミング
酵素の存在する物は、生の野菜と果物、その他の生鮮食品しかない。50℃以上の加熱で失活(死)してしまうからだ。
朝に摂るなら、生のフルーツ2種と野菜おろし、納豆がベスト。好転反応ではあるのだが、食間や食前だと血管が拡張して赤くなるため、酵素サプリメントの場合は昼食後と夕食後に飲みたい。
きれいになる酵素
食べる、飲むだけではなく、酵素の力を利用して、体の外側もきれいに。
免疫の80%が腸にあり、それを酵素が活性化するため酵素を経口摂取する効果は大きいが、肌などに使っても効果的なのだ。
酵素洗顔で黒ずみ、ざらつきにさよなら
くすみやざらつき、ポツポツと目立つ毛穴対策には、酵素洗顔が効果的だ。
角栓の元となる古い角質の正体はたんぱく質。プロテアーゼやパパイン、たんぱく質を分解する酵素が使われている洗顔料を使うことで、すっきりとクリアな肌にすることができる。
また、皮脂対策には、脂肪を分解する酵素(リパーゼなど)が入った洗顔料を選ぼう 。しかし、角質除去もやりすぎると肌を傷めることになるため、肌の調子をよく観察しながら、週1回くらいのペースで取り入れてみて。
酵素風呂で血行を促進
お湯ではなく、おがくずや米ぬかを浴槽に敷き詰め、その発酵熱で体を温める酵素風呂 。じわじわと体の芯まで熱が届き、たっぷりと汗もかけて、解毒されたような爽快感を味わえる。
専用サロンの他、入浴剤もあるので、自宅でその効果をじっくり確かめることも可能だ。
酵素化粧水でしっとり潤う
昨今の酵素ブームで、大手化粧品メーカーも酵素の作用に注目している。ここ数年で、酵素の機能を活かし、肌代謝や保湿効果を高める化粧水や美容液が続々登場。
最新の科学がもたらす美容効果やアンチエイジング効果にも期待したい。
さまざまな「酵素」の効果で、もっときれいに健康に
私たちの体に欠かせない存在であり、さまざまな力を秘めている酵素。その効果を最大限に活用するには、それぞれの目的に合わせた取り入れ方と、その種類を吟味することも重要だ。「酵素」を正しく理解して毎日の暮らしに取り入れることで、美しく健康な体を目指してみてはいかがだろうか。